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夫が遺言さえ残しておけば、妻が家を追われることはありませんでした。
都内のある一軒家に老夫婦が住んでいました。土地建物の名義は夫でした。子どもはいませんが、夫には田舎に住む姪がいました。老夫婦と姪とは、長らく疎遠になっていました。 ある日、夫の留守中に妻の友人が遊びに来て、妻に言いました。
友人「ねえ、余計なお世話かもしれないけど、ご主人が亡くなった後のことは考えているの?最近は、相続でよくもめるって聞くじゃない。」
妻「うちは身内もいないし、財産もないもの。もめる心配なんかないわ。」
友人「何を言っているの。この家はご主人の名義でしょ?それに、あなたのご主人には姪っ子さんがいるんでしょ?相続でもめるかもしれないから、遺言を書いてもらったほうがいいと思うわ。」
妻「大丈夫よ。姪っ子とは、ふだん付き合いもないし、もめるはずがないわ。それに、夫に遺言を書いてなんて言ったら、怒り出すに決まっているわ。おれはまだまだ死なないってね。」
それから5年後、夫は亡くなりました。もちろん遺言はありませんでした。妻は、葬儀を終え、四九日も済み、相続税の申告をしようと税理士に相談に行きました。そこで妻は予想外の事実を知ることになります。
税理士「ところで、相続人は他に誰かいますか?」
妻「子どももおりませんので、相続人は私だけだと思います」
税理士「ご主人にご兄弟がいるとか、甥姪がいるということはないですか?」
妻「姪がひとりおりますが・・・」
税理士「じゃあ、それが相続人です。ご自宅はどうするとか話はついているのですか?」
妻「いいえ、何も話していません。ですが、自宅は私が相続するつもりです。」
税理士「そんなこと言ったって、法律上は、姪っ子さんにも4分の1の権利があるんだから、あなたの勝手にはいきませんよ。きちんと姪っ子さんの了解をとらなきゃ。」
妻は、姪に、自宅を自分が相続することについて同意をもらおうとしました。しかし、姪は同意してくれませんでした。
姪「今まで何の連絡もよこさなかったのに、連絡してきたと思ったら、相続分を放棄しろですって?なんて失礼な方なんでしょう。」
これが姪の言い分でした。
しばらくすると、姪から遺産分割調停を申立てられてしまいました。妻が法律相談に行ったところ、弁護士にこう言われました。
弁護士「どうしてご主人に遺言を書いてもらわなかったんですか・・・」
都心の一軒屋は思いのほか価値があり、遺産の4分の1に相当するお金を姪に渡すには、妻は自宅を売却する以外に方法がありませんでした。現在、妻は都内の狭いワンルームマンションを借りてひっそりと暮らしているそうです。夫が遺言を残しておけば、こんなことにはならなかったのですが……。











